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は じ め に
胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:TOS)は,1956年にPeetらにより提唱された概念であり,いわゆる胸郭出口部での神経血管束の圧迫により,患側上肢の多彩な症状を呈する疾患と定義される1).発生原因として解剖学的破格,職業,姿勢,スポーツ活動などが報告されており2~6),スポーツに関してはオーバーヘッドスポーツ,特に野球選手のTOSの報告が多い3~6).投球動作は,その動作特性から胸郭出口部における神経血管束の圧迫や牽引が生じやすく,斜角筋間7),肋鎖間隙8),および烏口突起下部9,10)のいずれの部位においてもTOSを発症する可能性がある.
肩甲胸郭関節機能異常とは肩甲骨の静的・動的アライメント異常を有する状態と定義される11).肩甲胸郭関節は機能関節であり,定量評価がむずかしいため,その機能を可視化するためにさまざまな評価法が報告されている12).Burkhartらは,肩甲骨位置異常,肩甲骨下角突出,烏口突起の位置異常と痛み,および肩甲骨運動障害の4項目からなる評価法を提唱し,これらの徴候がみられる病態を “SICK scapula syndrome” として肩甲胸郭関節機能を評価している13).
肩甲胸郭関節機能の異常は,投球に起因する肩関節や肘関節の障害と密接に関連することが報告されている.現在まで肩峰下インピンジメント14),腱板障害15),関節内インピンジメント16),肩甲上腕関節不安定性17),および肘障害18)との関連が示されている.肩甲胸郭関節機能の改善は投球障害治療の基本と位置づけられており,TOSに関しても例外ではない.しかし,現在までTOSと肩甲胸郭関節機能異常の直接的な関連性について示した報告はない.本研究の目的は,野球選手におけるTOSの有病率と肩甲胸郭関節機能異常の有所見率を明らかにし,TOSと肩甲胸郭関節機能の関連を調査することである.
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