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は じ め に
寛骨臼回転骨切り術(rotational acetabular osteotomy:RAO)は発育性股関節形成不全に対する代表的な関節温存手術であり,主に前股関節症および初期の変形性股関節症に対して行われてきた.その優れた中・長期成績に関してはいうまでもないが,実際には時間をかせぐ手術であるという側面も認識しておくべき手術法である.一度の関節温存手術で一生痛みのない関節を維持できるのであれば問題ない.しかし,いずれ進行した変形性股関節症に移行するのであれば,RAOにより加えられた骨の変形や筋肉へのダメージは後のコンバージョン人工股関節全置換術(THA)の妨げとなるであろう.
RAO後のコンバージョンTHAでは大腿骨側の変形はプライマリーTHAと違いはないので,ステム設置に関しては特に問題はない.しかしながら,本来の解剖学的構造を呈していない寛骨臼変形に対してカップ設置を行うには,注意と工夫が必要となる.
RAO後の単純X線正面像では,一見すると外上方にカップを設置すれば問題ないように思うことが多い.しかし実際には,外上方では前方もしくは後方に大きな骨欠損が生じていることが少なくない.そこには硬化した骨が存在するものの,浅い皿をひっくり返したような形状となっており,カップを掘り込んで固定するということが困難である.大きなカップを多くのスクリューでなんとか固定したという苦い経験をしたことのある術者がいることであろう.筆者もそれらの経験を経て,最近ではCTや3Dテンプレートを用いた入念な術前準備を行ったうえで手術に臨んでいる.自験例ではほとんどの症例において,仰臥位で術中X線透視を利用しながらTHAを行っている.カップは原臼位設置を基本として術前計画を立てており,症例によっては前後壁に収まる小さなカップを用いることでそれを可能としている.
本稿では,他施設で施行されたRAO後の変形性関節症(OA)に対して,同一術者が施行したコンバージョンTHAの成績,カップ設置の術前計画,手術の注意点と工夫について解説したい.
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