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は じ め に
変形性肘関節症は,骨棘によるインピンジメントと関節包の拘縮により可動域制限と肘関節痛を引き起こす1).関節辺縁には骨棘が形成されるが腕尺関節摺動面は保たれているため,骨棘切除,滑膜切除,関節包の解離を行う関節形成術が行われることが多い.特に低侵襲の関節鏡視下手術は,合併症の低減と早期のリハビリテーション加療が可能であり,有用な方法である2).しかし,肘関節鏡手術で良好な術後可動域を獲得するためには,ワーキングスペースが小さい肘関節内において可動域制限の原因となっている骨棘を適切に切除する必要があり,術者の経験と習熟度が治療成績に影響を与える.また,変形性肘関節に対する関節形成術の術前評価においては,単純X線像やCTを用いて形成された骨棘や遊離体の位置を確認することができるが,実際に可動域制限の原因となっている骨棘病変を正確に判断することはできないため,定性的な評価となる.われわれは,変形性肘関節症に対する鏡視下関節形成術の治療成績の向上と治療の標準化をめざして,3Dコンピュータモデルを用いた肘関節動態解析により可動域制限の原因となっている骨棘病変を定量的に評価する術前シミュレーションプログラムを開発した.さらに,術前シミュレーションで同定した三次元の病変情報をナビゲーションシステムに入力することにより,術中に関節鏡映像とともにナビゲーションモニタにおいて,リアルタイムにブレードと病変の三次元的位置を確認することができる手術支援技術を考案した.肘関節鏡手術におけるナビゲーション使用の手術精度は過去に報告がなかったため,まずは模擬骨を用いた基礎実験で精度検証を行い,手術精度を確立後,臨床応用を始めている.本稿では,動態解析を用いた術前3Dシミュレーションによる病変部位の定量化の方法,ナビゲーションシステムを用いた関節鏡手術の精度ならびに実臨床での使用結果を紹介する.
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