- 販売していません
- 文献概要
第8回日本脊椎前方側方進入手術学会(JALAS)での発表のために,腰椎前方アプローチの歴史について調べていたところ,二つの論文の最終著者にGoichi Asamiの名前が入っているのが気になりました.腰椎前方アプローチの世界ではじめての報告は,京都帝国大学・伊藤弘(ひろむ)教授による1934年のJournal of Bone and Joint Surgery(JBJS)[Ito H, Tsuchiya J, Asami G. A New Radical Operation for Pott’s Disease. J Bone Joint Surg. 1934]ですが,この2年前1932年のAmerican Journal of Surgeryに,閉塞性動脈硬化症に対する腰仙部交感神経切除術の論文が発表されています(Ito H, Asami G. Lumbosacral sympathetic ganglionectomy. Am J Surg. 1932).伊藤教授はもともと外科のご出身で,交感神経切除術と同じ手術アプローチを用いて腰椎前方手術を行ったのですが,この二つの論文のどちらにも最終著者として入っているGoichi Asamiとはどんな人なのだろう? という疑問が発端です.第2著者の土屋準一先生は伊藤教授の助教授で,京都大学整形外科の同門ではよく知られた方です.伊藤教授の1934年JBJS論文のタイトルには,Goichi Asami, MD, Surgeon-in-Chief, Okinoyama Dojin Hospital, Ube, Japanとなっています(図1).沖の山同仁病院は山口大学病院の母胎となった病院です.伊藤教授は京都市上京のご出身で,京都帝国大学医学部に進学する前に山口高商大学予科に行かれました.伊藤教授が京都の第三高等学校ではなく山口に行かれたのは,柔道をきわめるためであったようです.伊藤教授は柔道の達人で,山口高商大学予科の学生であった19歳の時に講道館における全国大会で優勝されました.今でいう柔道の日本チャンピオンで,当時の講道館館長・嘉納治五郎から大刀を授与されました.この刀は備州長久の銘のある南北朝時代の名刀であったそうです.(山室隆夫.整骨放談:備州長久の刀.臨床整形外科.1980)
© Nankodo Co., Ltd., 2022