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はじめに:大腿骨近位部骨折の概要
本稿では,大腿骨近位部骨折とその受傷機転として代表的な転倒との関連を,近年(2016~2020年)の文献から得られた知見を主に調べた.その調査内容をもとに,筆者らの研究として,いつ,どこで,どのような患者が,どのように転倒して本骨折を受傷したのかまとめた.コロナ禍で本骨折の発生率が増加することは容易に想像される.外出を控えることで一見発生率は減少しそうであるが,やはり運動不足が加速すると歩行経験が減少し,それによる転倒事故の増加が危惧され,ますます本骨折予防のための対策が重要になってくるかもしれない.
本骨折は高齢者に生じやすい骨折である.わが国で発生した本骨折の発生率について,近年では特定健診等情報データベースを活用した報告がある1).対象期間は2012~2015年であり,その間本骨折の発生数は男女ともに年々増大している.2015年には,年齢が50歳以上に生じた本骨折の発生率は,男性で65.4/100,000人,女性で185.0/100,000人と男性よりも女性で高く,この傾向は2012~2015年で一貫している.一方,発生率は男性のほうが年を追うごとに増大していることが近年の傾向である.
本骨折を受傷する原因の80%は転倒である2).しかし,転倒によって必ず本骨折を受傷するわけではなく,その割合はわずか0.2%とされている3).つまり,転倒が本骨折の発生に直結するわけではなく,骨折に陥るリスクが高い転倒状況であることを示唆している.研究者たちは,転倒により生じた大腿骨近位部骨折(fall-related hip fracture, fall-induced hip fracture)に着目して詳細な転倒状況を明らかにし,転倒による本骨折の予防に役立てようとしている.
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