Japanese
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特集 ロコモティブシンドロームの現況
Ⅲ.ロコモの治療
2.バランス運動における経頭蓋直流電気刺激の効果
Effects of transcranial direct current stimulation on balance exercise
河村 顕治
1
K. Kawamura
1
1吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科
1Dept. of Physical Therapy, School of Health Science and Social Welfare, Kibi International University, Takahashi
キーワード:
sarcopenia
,
electrical stimulation
,
transcranial direct current stimulation
Keyword:
sarcopenia
,
electrical stimulation
,
transcranial direct current stimulation
pp.584-586
発行日 2021年5月20日
Published Date 2021/5/20
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_584
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は じ め に
高齢者において単純な立位姿勢保持時に数字の逆唱や語想起などの認知課題を同時に遂行させると姿勢動揺が増大することが確認されている.逆に二重課題法を姿勢バランス訓練として用いた研究が,近年数多くみられるようになった1,2).1997年にLundin-Olsson3)らにより,高齢者の転倒原因には運動機能低下だけでなく二重課題能力低下が影響することが報告された.高齢者の転倒は,加齢に伴う筋力低下,バランス能力低下などの身体機能低下によるものとされてきたが,二重課題遂行能力と転倒の関連性や認知機能との関連性が注目されるようになった.二重課題条件下でのバランス運動の静的および動的姿勢安定性に対する効果はまだ明らかになっていないが,2017年のシステマティックレビューとメタアナリシスによると,87.5%の研究で有意な改善が報告されたとのことである4).リハビリテーション場面で実施される二重課題は,第1課題に運動課題が用いられ,第2課題には認知課題が多く用いられている.しかし,認知課題は多くの高齢者にとって実施が容易ではなく,継続的に実施するのは困難である.D’Espositoら5,6)は,二重課題遂行に特異的に賦活を示す脳領域は前頭前野背外側部と報告している.前頭前野の機能は認知,実行機能であり,日々の行動の基本的な役割を担っている.前頭前野に経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)を行うことで二重課題遂行能力の遅延的強化が得られたという報告がある7).そこで,二重課題法における認知課題の代替としてのtDCSの効果を検証した.
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