書評
『大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021(改訂第3版)』
神野 哲也
1
1獨協医科大学埼玉医療センター整形外科主任教授
pp.1208-1208
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_1208
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- 文献概要
診療ガイドライン(CPG)は,患者と医療者の協働の意思決定を支援し,根拠に基づく医療(EBM)を実践するための資料である.日本整形外科学会では2005年からCPGの発刊を開始し,今日までに18のCPGが出版済みないしは策定中である.私も変形性股関節症CPGの策定に初版から携わっているが,CPGの考え方は改訂のたびにかわっている.初版作成時は,文献のエビデンスレベルと数が各clinical question(CQ)に対する回答文の推奨度設定における最重要根拠であった.しかしながら今日では,CPGは「健康に関する重要な課題について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されている.つまり,エビデンスレベルの高い研究結果をそのまま重視するのではなく,システマティックレビューならびに可能であればメタ解析を加え,患者意見も入れ,益のみならず害も考慮する.たとえば,大規模無作為化対照試験で有効性が示された治療法でも,合併症はもとより医療コストなどによっても推奨度が下がる.このように,CPGの考え方は時代とともに変化し,さらに当然ながら新たな研究結果も加わることから,CPGの寿命は5年程度といわれている.
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