講座 ガイドライン・2
大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン
萩野 浩
1,2
,
渡部 欣忍
3
,
中野 哲雄
4
,
澤口 毅
5
,
松下 隆
3
Hagino Hiroshi
1,2
1鳥取大学医学部保健学科
2鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部
3帝京大学整形外科
4公立玉名中央病院
5富山市民病院整形外科・関節再建外科
pp.441-446
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101416
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はじめに
診療ガイドラインとは,特定の臨床状況において,医師をはじめとした医療スタッフおよび患者が適切な決断を下せるよう支援する目的で体系的に作成された文書である.現在では数多くの疾患を対象としたガイドラインが作成・出版されているが,わが国で診療ガイドラインが広く作成されるようになったのは,1999年度から厚生労働省が班研究によって20疾患のガイドライン作成を進めてからである.整形外科疾患については,大腿骨頚部/転子部骨折と腰椎椎間板ヘルニアがこの20疾患に含まれた.日本整形外科学会ではこれらの2疾患に加えて,頚椎症性脊髄症,頚椎後縦靱帯骨化症,上腕骨外側上顆炎,アキレス腱断裂,外反母趾,前十字靱帯損傷,変形性股関節症の診療ガイドライン,骨・関節術後感染予防ガイドライン,軟骨腫瘍診断ガイドラインを作成・出版している.
大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン(以下,本ガイドライン)は2002年より作成が開始された.その時点で諸外国のガイドラインを検索したところ,参考にすることができたのはScottish Intercollegiate Guidelines Networkのもののみであった.そこで本ガイドラインはevidence based medicine(EBM)の手法に従い,臨床研究の結果から得られたエビデンスに基づいて作成を進め,2005年6月に完成・出版された1).
本稿では本ガイドラインの作成過程を紹介し,その利用方法と作成経過中あるいは普及後に明らかとなった問題点を概説する.
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