整形トピックス
黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成および病原性における分泌タンパク質Eapと細胞壁アンカータンパク質SasGの機能に関する研究
米本 圭吾
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1東京慈恵会医科大学整形外科学講座
pp.892-892
発行日 2020年7月1日
Published Date 2020/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_892
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地球上の微生物の大部分は,バイオフィルムと呼ばれる集合体として環境中や生体内などに存在する1).バイオフィルムは微生物が固体表面に接着し,自身が産生するextracellular matrix(ECM)に覆われながら形成される.バイオフィルムが形成されると免疫系や抗菌薬に対し抵抗性を獲得する.初回人工股・膝関節全置換術の0.5~1%にインプラント感染が生じると報告されており2),その代表的な原因菌は黄色ブドウ球菌である.黄色ブドウ球菌は菌株によりさまざまな性質のバイオフィルムを形成し,タンパク質が主成分の株では分泌タンパク質,細胞壁アンカータンパク質,細胞質タンパク質が重要な役割を果たす3).東京慈恵会医科大学附属病院で分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌臨床分離株のMR23株はタンパク質が主成分のバイオフィルムを形成し,そのECM中に分泌タンパク質extracellular adherence protein(Eap)を多量に含む4).Eapは黄色ブドウ球菌にのみ存在する分泌タンパク質でありバイオフィルム形成を促進し,病原性に関与する5).細胞壁アンカータンパク質であるStaphylococcus aureus surface protein G(SasG)は菌体間の接着を促進し,バイオフィルム形成に関与する6).本研究では,MR23株のバイオフィルムの解析を通し,黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成メカニズムを解明することを目的とした.
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