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特集 整形外科臨床研究の手引き――適切に行い,正しく読み解くために
Ⅲ.統計解析
5.傾向スコア解析の考え方
Understanding propensity score analysis
篠崎 智大
1
T. Shinozaki
1
1東京理科大学工学部情報工学科
1Dept. of Information and Computer Technology, Tokyo University of Science, Tokyo
キーワード:
confounding
,
propensity score
,
regression
,
stratification
Keyword:
confounding
,
propensity score
,
regression
,
stratification
pp.571-576
発行日 2020年5月30日
Published Date 2020/5/30
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_571
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は じ め に
適切な医療を作り上げていくためには,異なる治療や処置どうしを比較する研究(比較研究)が欠かせない.いわゆる「根拠にもとづく医療(evidence-based medicine)」をめざす研究計画でよく用いられるPICO(対象患者・試験治療・対照治療・アウトカム)という状況設定も,じつは比較研究を念頭においてリサーチ・クエスチョンをかたちづくるのに特化したものである.本稿では,このような比較研究,特に治療のランダム化が行われていない観察研究の解析方法として傾向スコア解析を理解することを目的とする.
傾向スコアに関連して,観察研究データ解析を行う際に「因果推論」という言葉を耳にする機会が日本でも急増してきた.日本語で読める教科書や文献,ウェブ資料も増えており,因果推論を取り巻く学習環境はこの十年で充実してきているものの,「なんだかわかったような,わからないような…」という読者も多いと思う.それはおそらく,以下の一見逆説的な状況が原因ではないであろうか.
・因果推論は古典的な統計学とは違う枠組みだといわれるにもかかわらず,結局は「回帰分析」など従来の統計手法も使われること.
・それにもかかわらず,傾向スコアなど従来の統計学の教科書にないような手法が大きく取り上げられ,なんだか因果推論に独特の方法論が必要である気がすること.
傾向スコアは使い方だけを学んでも理解にたどり着けないし,見様見真似で「手引き」に従っているといつか危ない目にあう.本項で因果推論に立ち入ることは紙幅の都合上できないが,従来の回帰分析と対比した傾向スコア解析の考え方,そして実際の応用例までを紹介する.
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