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は じ め に
本項では,生存時間解析の基本的な考え方を解説する.生存時間解析とは,死亡などなんらかの関心のある事象が生起するまでの期間を分析する統計手法のことで,医学研究のさまざまな分野で広く用いられている.「死亡した」,「死亡していない」を問題にする場合には,二値データとして取り扱うことになる.その場合には,χ2検定,Fisher直接確率法,ロジスティック回帰分析などが分析方法の候補となる.生存時間解析では,死亡したか否かを問題にするのではなく,ある時点を起点として,死亡するまでの期間の長短を問題にする.生存時間解析が広く用いられる場面として,抗悪性腫瘍薬の臨床試験をあげることができる.抗悪性腫瘍薬の開発においては,生存できる期間をできるだけ延長することが目的であり,どの程度生存期間を延長できるか,標準的な抗悪性腫瘍薬に比べて死亡リスクを果たして軽減しているのかどうかが問題となる.抗悪性腫瘍薬の臨床第Ⅲ相試験では,標準治療を対照として,無作為化研究による比較を行うことが多いが,無作為化された時点を原点として,任意の原因による死亡までの期間を評価項目として比較が行われることが多く,Kaplan-Meier法,logrank検定,Cox比例ハザードモデルによる統計解析がきわめて広範に用いられている.本項ではこれらの手法の基本的な考え方を説明する.数式をほぼ排除して背後にある考え方の説明を行っている.より詳細について学びたい読者は,文献1)とその引用文献を参照してほしい.
これらの方法はいずれも約半世紀前に導入された方法であり,標準的方法として広く用いられている.一方で,盲目的に用いられている面すらある.すべての統計手法にいえることであるが,これらの方法にも欠点が存在する.最近,新たな医学上の要請から,その欠点が無視できない状況がしばしば実際の臨床研究に現れ,克服する努力が継続されており,いくつかの最近の試みを簡単に紹介する.
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