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1.は じ め に
2019年4月18日(木)~20日(土)まで,パシフィコ横浜(横浜市)を会場に第48回日本脊椎脊髄病学会を開催させていただいた(図1).1974年に第1回日本脊椎外科研究会が岩原寅猪会長のもとに開催された伝統ある学会を,山梨大学整形外科学講座が担当する機会をいただき,学会を構築されてきた先人の先生方,役員,会員の先生方に心から御礼を申し上げたいと思う.
3年前に担当が決定し,会場と会期を決定する必要があったが,テーマの決定が喫緊の課題であった.当時学会のテーマは四字熟語の使用が多く,早速,本を数冊購入して正月休みに読破した.それでも,なかなか意中の熟語には出会えなかった.筆者は1989(平成元)年に医師となり,2009年に教授を拝命した.それぞれ,30年,10年が経過する年に開催することになる.何を大切に過ごしてきたかを振り返ると,常に臨床での問題や不明な点を研究で解明し,臨床へのフィードバックを行う努力をしてきた.すると,「事上磨錬」というむずかしい言葉があることを知った.
王陽明は『伝習録』に,現実の日常生活の中で活動し,その中で道をみつけて鍛錬する重要性を説いた.われわれ医師の世界でも,実際の患者さんの診療を通して,医学や医療を鍛錬することが重要である.その過程で不十分な診断あるいは治療法があれば,基礎や臨床研究に立ち返って真実を解明し,さらにその成果を臨床へ還元し,最終的には新しい医療として患者さんに届ける任務があると思う.そこで,副題は “ask what you can do for spinal disorders” とした.ご存知のように,John F. Kennedyが演説で使用された言葉から引用させていただいた.著名な先生方が確立されたすばらしい手術などの治療法を真摯に正確に実施できる努力はたいへん重要であるが,一方でわれわれ臨床医自身が新しい検査や医療を開発し,脊椎脊髄病学の発展に寄与する姿勢も重要である.脊椎脊髄病には多くの難題が山積しているが,このスピリットで解決できればと考えて,最終的にこのテーマに決定した.会長講演では,椎間板ヘルニアの研究とmatrix metalloproteinase(MMP)を用いた新規椎間板治療,また,浜松医科大学と信州大学と協力して行ってきた臨床研究の成果について報告し,筆者の「事上磨錬」の実践についてお話を聞いていただいた.
学会には1,603演題をご応募いただき,厳正な査読により採択率は67.3%となった.また,英語演題の応募は約100演題で,海外から約6割の応募をいただいた.北米,中米,アジア,欧州,中東など13ヵ国に上る.そこで第3会場は3日間を通して,シンポジウム,スポンサーセミナーを含めて英語口演とし,さらに,動画を駆使したExpert Technical Noteは演者の先生に英語スライドをお願いし,日本語から英語の通訳を実施し,海外からの参加者に配慮した.
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