学会を聞く
第41回日本疼痛学会を主催して
牛田 享宏
1
T. Ushida
1
1愛知医科大学医学部学際的痛みセンター
1Multidisciplinary Pain Center, Aichi Medical University, School of Medicine, Nagakute
pp.187-189
発行日 2020年2月1日
Published Date 2020/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_187
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.は じ め に
第41回日本疼痛学会を2019年7月12日(金)~13日(土)に名古屋国際会議場で主催させていただいた.本学会は日本の疼痛医学研究のもっとも中核に位置すると考えられる学会であり,生理学,薬理学,解剖学などの基礎研究者や麻酔科医,脳外科医,整形外科医といった痛みの臨床に関わるものが集合する学際的な学会である.国際的には痛みの定義や痛み医療・研究の世界の中心であるInternational Association for the Study of Pain(IASP)日本のチャプターの役割を果たしている.
本学会の設立は1973年に遡るが,臨床でみられるさまざまな痛みの問題を臨床と基礎の医学者が議論し,情動から遺伝子までを考えてきた.特に日本の疼痛の基礎研究は常に世界のトップを走ってきており,その国際的な評価はきわめて高いが,それらは本学会を通じて育まれ発信されてきたことは間違いない.
一方,長らく臨床分野は世界的には後塵を拝してきたところがあった.これは膝痛,肩痛,外傷後の痛み,神経障害性疼痛の保存的治療から手術的治療までのほとんどを日本の疼痛医療体制では整形外科が担っている一方で「痛み」をターゲットとした研究は麻酔科をはじめとした他科の先生方が担当する領域で主に進められてきたところも少なからず要因になっていると考えられる.実際,日本疼痛学会における整形外科領域の研究者の参入は非常に遅く,その歴史は20年程度であるが,整形外科医療における疼痛の重要性の認識の向上とともに多くの研究者が参入してきており,3年前に,山下敏彦先生(札幌医科大学)が本学会の学術集会を主催されている.
© Nankodo Co., Ltd., 2020