書評
『そうだったのか! 腰痛診療――エキスパートの診かた・考えかた・治しかた』
大川 淳
1
1東京医科歯科大学整形外科教授
pp.389-389
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_389
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- 文献概要
腰痛治療にユニークな視点を投げかけ続けている松平浩先生がまた一冊の本を出した.多作の松平先生であるが,これまでどちらかといえば,患者向けの腰痛コントロールの指南書が多かった.しかし,本書はこれまでと違って,たいへん本格的な教科書である.装丁は比較的軽い感じになっているものの,中身は非常に濃い.松平先生の東京大学整形外科におけるメンターである自治医科大・竹下克志教授との共著であるが,副題として「エキスパートの診かた・考えかた・治しかた」とあるように,基本的に腰痛に対する病態の理解と保存的治療を扱った書籍である.
著者らが長年独自に研究をしてきた疫学的な見地から,腰痛が慢性化する実態はfear-avoidanceにあると説くところから話が始まる.画像上の異常所見の強調など医療者の何気ない不適切な発言が,恐怖回避思考・行動を助長し,安易な安静指示も回復に悪影響を与えるとして,患者の腰痛に対するネガティブな思考の一部は医原性であると指摘している.さらに腰痛診療を海外のガイドラインを交えて評価するとともに,松平先生が得意とするさまざまな評価方法についても詳細に解説し,自らが行ってきた日本語訳を巻末に付録としてつけて,後発の研究者の便を図った.
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