書評
抗悪性腫瘍薬コンサルトブック(改訂第3版)―薬理学特性に基づく治療
安藤 雄一
1
1名古屋大学医学部附属病院化学療法部 教授
pp.1255-1255
発行日 2025年12月1日
Published Date 2025/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika136_1255
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- 文献概要
近年,がん薬物療法の治療成績が向上するなかで,最適な治療を提供するために臨床薬理学の重要性はますます高まっている.臨床薬理学とは,薬物の作用機序,薬物動態や薬力学,そのほかの特性に関する科学的根拠に基づき,薬物療法をより合理的かつ効果的に行うための理論と方法を探究する学問である.たとえば,各薬剤の薬物動態(Absorption, Distribution, Metabolism, Excretion:ADME)や薬力学を理解することで,高齢者や腎機能障害など特別な背景をもつ患者への対応が可能となり,薬物相互作用も正確に把握できるようになる.ゲノム薬理学に精通すれば,分子標的治療薬の選択や,患者間における薬物応答の違いを科学的に捉えることができる.耐性機序に関する知識は,薬剤変更時の判断材料として有用である.日常診療で出会う患者の多くは教科書どおりにはいかないが,そうした場面においても臨床薬理学は科学的なアプローチの道筋を示してくれる.
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