Book Review
抗悪性腫瘍薬コンサルトブック―薬理学的特性に基づく治療 改訂第2版
田村 和夫
1
1福岡大学医学部総合医学研究センター教授
pp.1206-1206
発行日 2018年5月1日
Published Date 2018/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika121_1206
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- 文献概要
本書を手にとったとき,タイトルにまず目を引かれた.一般によく使用される「抗がん剤(薬)」とせず,「抗悪性腫瘍薬」としている.英語ではantineoplatic agentsにあたるが,欧米では現在でも悪性腫瘍の治療薬に対しchemotherapy(化学療法)がよく使用される.抗がん薬の開発は,2000年を境に殺細胞性抗がん薬から分子標的治療薬にシフトしている.化学療法がPaul Ehrlich,秦佐八郎らが開発したサルバルサンやその他のケミカルに対して命名されたchemotherapyに由来することを考えると,以前より使用されている化学療法薬と低分子・抗原(大分子)を標的としたがん治療薬を包含する形で抗悪性腫瘍薬というのが最もふさわしいと考えられる.正確なterminologyは重要であることから,時代を反映した適切な言葉の普及を意図したものであろう.さらに,抗がん薬治療のknow-howを記載したマニュアルではなく,参考書という意味の「コンサルトブック」としていることも,その内容を期待させるタイトルとなっている.
本書は第2版,第1版と同様ポケットサイズで,白衣のポケットに入れて持ち運びでき,病棟・外来で必要時,容易に取り出し参照できるのはありがたい.筆者はこの書評を記載するにあたり,通勤バス・地下鉄のなかで通読した.老眼鏡をかける手間を除けば,電車が混んで立っていても片手で読むことができる.
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