腎機能が悪化するにつれて血糖コントロールが改善することがある

　2型糖尿病を中心に糖尿病患者は増え続けている．それに伴い，糖尿病性腎症をはじめとした糖尿病合併症患者も増加の一途をたどっている．最近でこそ，本邦における透析患者の増加はやや鈍化しているが，いまだ絶対数としてはかなり多いままで推移している（図1）．腎症をはじめとした糖尿病合併症の発症・進展予防には第一に血糖コントロールである．血糖コントロールの指標としてはHbA1cが使用されているが，もともとこの数値が不良であった患者が，日常生活があまり変わっていないにもかかわらず，改善してくる場合がある．そして，そうした患者ではそのときすでに腎機能が悪化していたというケースにしばしば遭遇する．時には低血糖で救急搬送されて初めて発覚することもある．本稿では，この腎機能悪化と血糖コントロールに関するメカニズムを解説するとともに，本邦における現状と対策について考察する．