特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第2章:循環器
肺水腫の原因は常に心不全とは限らない
平川 今日子
1
,
辻田 賢一
1
1熊本大学病院循環器内科
キーワード:
肺水腫
,
心原性肺水腫
,
ARDS
Keyword:
肺水腫
,
心原性肺水腫
,
ARDS
pp.403-405
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_403
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肺は空気と血液の循環を担う特徴的な臓器であり,各々が混ざり合うことなく循環している.空気は気管支を通り最終的には肺胞腔へ到達するが,肺胞壁は肺胞上皮細胞で覆われている.主にⅠ型上皮細胞は,毛細血管内皮細胞と基底膜とを介して血液空気関門を形成し,肺胞内ガスと血液ガスの交換を行っている.この間質腔には少量の水分が存在しており,肺胞腔内の水分と合わせて肺血管外水分と称されている.肺水腫は,この肺血管外水分量(extravascular lung water:EVLW)が異常に増加した状態と定義されている1).EVLWは肺胞を体液から保護するためのリンパドレナージシステムによってコントロールされているが,肺胞内圧の変化または肺胞毛細血管壁の透過性によって変化し得る.肺水腫は,肺静脈圧の上昇や肺血管透過性の亢進などにより引き起こされる.程度により間質性肺水腫,肺胞性肺水腫に分類されるが,結果として肺でのガス交換への障害が発生し呼吸障害を引き起こす.
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