特集 心不全のすべて―増え続ける心不全患者にどう対峙するか
特集のねらい
-増え続ける心不全患者にどう対峙するか
波多野 将
1
1東京大学大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座
キーワード:
ivabradine
,
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬
,
SGLT2阻害薬
,
destination therapy
Keyword:
ivabradine
,
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬
,
SGLT2阻害薬
,
destination therapy
pp.2-3
発行日 2021年7月1日
Published Date 2021/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_2
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- 文献概要
現代は心不全パンデミックの時代といわれ,国民総人口が減少しているなかにあっても心不全患者は2030年頃までは増加すると予測されている.心不全入院患者数は現在でも年間10万人を超えて急性冠症候群の約2倍に上る.また,循環器疾患に関わる医療費は国民総医療費の約20%を占め,第2位の悪性新生物の約1.5倍になるが,そのなかでも心不全診療に関わる医療費は循環器疾患のなかでも最も高額になっている.とくに高齢者における患者数の増加が大きな問題で,70歳未満における患者数は悪性新生物が最も多いが,70~74歳で心疾患の患者数が悪性新生物に並び,75歳以上ではその数は逆転している.2004年から2013年の10年弱の間に心不全入院患者の平均年齢は71歳から78歳と,7歳も上昇したとの報告もあり,心不全患者の高齢化は大きな問題となっている.このような患者の高齢化が進んでいるなかで,残念ながら治療成績は十分に改善しているとはいえない.2007年から2015年の間の心不全入院患者における入院期間は26日から16日に短縮し,院内死亡率は8%から4%に減少しているものの,1年生存率は15~20%程度であり,まったく改善していない.また,1年以内の再入院率は2007年から2015年の間は25%前後で推移していたが,最近では30%に上るとの報告もあり,心不全治療の進歩が強く求められている.
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