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診断のポイント
tolvaptanの登場や多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)の難病指定以降,本邦でも多くの囊胞性腎疾患の症例が確定診断のために専門医を受診するようになった.しかし,ADPKDは遺伝性腎疾患のなかで最も多い疾患であるにもかかわらず,残念ながら診断基準にゲノム情報は含まれない.これは本邦の診断基準に特徴的なことなのではなく,世界中いずれの診断基準も同様である(表1).責任遺伝子の一つであるPKD1遺伝子が,① 変異の位置が不特定で遺伝子領域全般にわたる,② 遺伝子領域が広い(47.2kb),③ mRNAが大きい(14.5kb),④ エクソン数が多い(46エクソン),⑤ 90%以上の相同性をもつ6個の偽遺伝子が存在する,といった理由により遺伝子検査が難しいことが原因である.現在,ADPKDの遺伝子診断は一部の施設で研究として行われているか,自費検査のいずれかである.一部の症例でADPKD診断基準に該当するにもかかわらず,遺伝子診断で従来の責任遺伝子(PKD1,PKD2)の変異がみつからず,ほかの囊胞性腎疾患の原因遺伝子と認識されている遺伝子の変異がみつかることがまれではない.このような症例では,遺伝子診断を行うことができなかった場合,画像診断も含めて何らかのADPKDとしては非定型的な臨床所見を認めることが多い.したがって,現在の診断基準に該当したからといってそのままADPKDと確定診断するのではなく,画像診断も含めて何らかの非定型的な臨床所見を認めた場合には,囊胞性腎疾患を専門とする医師の助言を求めたほうが安心であろう.
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