Japanese
English
投稿 症例
酵素補充療法開始6年後のFabry病患者に発症した若年性脳梗塞の1例
A case of juvenile cerebral infarction in Fabry disease, after 6 years of enzyme replacement therapy.
佐藤 辰貴
1
,
豊嶋 敏弘
2
,
松永 勇人
3
,
篠江 隆
4
,
田中 聡
5
T. Satoh
1
,
T. Toyoshima
2
,
H. Matsunaga
3
,
T. Shinoe
4
,
S. Tanaka
5
1静岡厚生病院臨床研修部
2静岡厚生病院内科
3静岡厚生病院健康管理センター
4静岡厚生病院神経内科
5静岡県立総合病院腎臓内科
pp.357-360
発行日 2018年2月1日
Published Date 2018/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika121_357
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は じ め に Fabry病は,α-ガラクトシダーゼA(GLA)の酵素活性低下によって,ライソゾーム内に変異globotriasylceramide(GB3)を主体とした中性スフィンゴ糖脂質の沈着をきたす疾患である.Xq21を遺伝子座とするX染色体劣性遺伝形式をとるが,heterozygousである女性における発症も知られており,本邦における新生児21,170人のスクリーニング調査では,6名にGLA遺伝子変異が確認されている1).
GB3の沈着部位としては,血管系,腎,角膜,心が主体であり,さらに神経系では,神経細胞,後根神経節,交感神経節,末梢神経(小径線維優位)に沈着がみられる2).学童期より,四肢疼痛発作や低汗症,皮膚被角血管腫(angiokeratoma),心不全3),角膜混濁,消化管症状(下痢,便秘,イレウス,アカラシア),蛋白尿などで発症し,腎不全,脳血管障害,心血管病変(左室肥大,弁膜症,不整脈,心筋症)を併発する4).本症の診断は,血漿や白血球におけるGLA活性の低下,またとくに女性の場合にはGLA遺伝子変異の確認である.未治療の男性患者の場合には,腎不全,心機能障害,脳血管障害などを死因として,その平均余命は41歳であるとされていた4).
本症には,遺伝子組み換えGLAによる酵素補充療法が有効であり5),本邦においても,2006年にagalsidase alfaの点滴静注製剤が薬価収載を受けている.
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