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冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は身近な手技となった.年間25万件以上がわが国で行われるこの治療法は限られた術者のみのものではなく,多くの施設で広く行われる手技となっている.冠動脈造影を行えるようになったらその次はPCIへ,ということで比較的若い循環器内科医がPCIの助手あるいは術者になることも多い.PCIの手技手法は,循環器治療のほかの分野でも応用可能なものが多く,これに習熟することは重要な意味合いをもつ.PCIの手技自体はある程度標準化されてきたものの,デバイスの進歩も著しく常にアップデートが必要な領域である.
さて,この分野の第一人者であり,わが国のPCIの発展とともに歩み,またみずからもPCIデバイスの開発に携わってきた伊苅裕二先生を編著者として一冊の本がまとめられた.本書は,PCI初心者が最初に読む本という位置づけで書かれた318頁からなる解説書である.PCI総論,解剖,病態の知識,カテーテル室の理解,画像診断の基本,基本手技など基礎的な項目に始まり,患者管理,病変ごとの基本的対処,合併症とその対処やPCI後の薬物療法まで,およそPCIに関わると思われる領域の多くを適度な分量配分で確認できることができる.カラフルなイラストないしは写真が挿入され,初心者にも非常にイメージしやすく,読みやすい内容となっている.さらには,重要な略語あるいは専門用語が多く解説されており,最新の情報のみならず歴史的に重要な臨床試験まで一通り網羅されているのもありがたい.出典も明示されており,クイックレファレンスとしても活用できそうである.各項目の分量も多過ぎずしかも少な過ぎない構成になっているところは,臨床上の問題が何かを常に意識している臨床医である編著者の采配によるものであろうか.
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