1枚のシェーマ
すべての大静脈が左側心房に還流していた症例
市川 肇
1
1JCHO大阪病院
pp.948
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu78_948
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印象に残っている症例は,左側相同(多脾症)の赤ちゃんでチアノーゼは強いもののバランスのとれた心室であった.私が独り立ちして手術を始めたころ,まだ心内構造をCT診断などできない時代であった.外見は心耳の形態以外ほぼまともであったが,心停止し上大静脈(SVC),下大静脈(IVC)をスネアして右房を開けるとのっぺらぼうの中隔が出てきて,上下から血液が染み出してくる部分に鉗子を突っ込むとその向こうには広い空間があり,思い切って上から下まで縦に切開すると左側心房のかなり向こうにSVC,IVC,そしてむしろ右寄りの肺静脈を確認した.図1のような自己心膜で血流転換(逆Mustardのような)手術を行った.幸い洞機能不全にもならず,今も元気にしているはずである.今なら3D模型をつくっていたであろう.術前のエコーを見直しても通常の位置(少し左側?)にIVCが還流しているようにみえた.
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