胸部外科医の散歩道
小児心臓外科医の育成について考える
市川 肇
1
1JCHO大阪病院
pp.310
発行日 2024年4月1日
Published Date 2024/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu77_310
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- 文献概要
小児心臓外科医がどうして育たないのか,「それはあんたが育てなかったからじゃないか」と非難されてもしょうがないことはわかっています.いろいろ教育用のツールを作ったりもしてきましたが,何よりも人間力をつける育て方と見放し方ができないシステムの問題ではないかと思っています.軍国主義時代の言葉ではありますが,「やってみせ,いって聞かせて,させてみせ,誉めてやらねば,人は動かじ」というのがあります.小児心臓外科の修練をしている中堅どころの方々と学会などで会うと,口をそろえて「手術させてくれない」という不満が出てきます.実際,外国でも昔はメインの手術はフェローにやらせないことがほとんどであったと思いますが,近年はJatene手術などの前立ちの場所から完全にコントロールできる手術であればやらせる施設も増えています.今,日本の小児病院で結局自分のところで後継者が育っておらず,チーフが退職したとたんに移行が上手くいっていないのでないかと思われる病院が見受けられます(あくまで私見ですが).私は自前で後継者が育っていると思っていましたが,しっかりした術者が私より前にみんな出ていって(横取りされて)しまい,外から迎えることになってしまいました.日本の術者は手術が好き過ぎてなんでも自分でやる,といえばまだ聞こえはマシですが,下を育てることの重要性をわかっていないと思います.
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