鏡下耳語
臨床医の育成について思うこと
関谷 透
1
1山口県立中央病院耳鼻咽喉科
pp.436-437
発行日 1973年6月20日
Published Date 1973/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207929
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現在のように医科系大学各科各教室は,研究にもつとも重点を置き,臨床教育に対しては熱意や体制が不足の状態にあることは否めないであろう。これではいわゆる良い臨床医は育ち難いのではないだろうか。広い意味の臨床教育が,今のように主として研究至上主義の,そして,臨床医育成コースの不完全な大学付属病院で行なわれている結果,患者は,"特定症例研究"を主眼とした取扱いの対象となり,臨床における患者と医師との人間関係は比較的に軽視される傾向が,おこるのではなかろうか。疾病そのものの病態については,かなり良く講義されていても,反面その診察態度についての説話を聞く機会は乏しく,また自己訓練もなされていないように思える。
これらのことが実際に病院勤務中に患者とのトラブルを起こす一誘因になつているのではなかろうか。"愁訴の多い患者"は気障わりなもので,忙しいとつい,つっけんどんに患者を扱うことがある。しかしこの人達も自尊心がある。むろん中には被害妄想的な患者もいるが,邪険に扱われると,医師に対する不満,不信さらに"不当な扱い"を受けたことを公けに訴えると喚めかれることになる。この傾向は最近,輩出している各種の"医療を告発する会云々"のプロパガンダによつて次第に多く見られるようになろう。
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