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少子高齢化の進行,経済の停滞,そして医療技術の進歩と国民の要求水準の高まりなどにより,病院経営は質的な変化を求められている.図1は県庁所在地を含む地方のある医療圏における傷病別入院患者数の推計を伏見の考案した手法によって行った結果を示したものである1)注1.今後急速に進む高齢化に伴い当該二次医療圏では肺炎,骨折,循環器系疾患(脳卒中)が増加する.表1は現在の病床種別の入院患者数を前提としたとき,各病床がどれだけ必要になるかを推計したものである注2.一般病床数の必要数は10%程度の伸びであるのに対し,療養病床の必要数がほぼ倍増する.当該地域は医療計画上,病床過剰地域であることから,現行の医療法を前提とすれば,これ以上の増床は不可能であり,したがって在院日数を短縮することが不可欠となる.表2はその結果を示したものである.2030年でみると一般病床の平均在院日数は2010年の18.9日から15.2日に短縮することが必要となる.おそらくこれは問題なく達成できるであろう.むしろ仮に平均在院日数が国の示しているような目標値に収れんするのであれば,この地域における一般病床数は余ることになる.他方,療養病床は医療療養型で186.9日から119.5日,介護療養型で399.1日から225.1日へと大幅な短縮を求められることになる.
以上の結果は当該地域においては今後,急性期以後の医療(介護)提供体制を整備していくことが必要であることを示している.しかしながら,現実には当該医療圏においては公的病院を中心に急性期病床の建て替えが断続的に行われており,急性期中心の入院医療提供体制の整備が進められている.このままの状況が進むと,近い将来,受け皿の問題から急性期医療も行き詰まってしまう可能性がある.
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