1枚のシェーマ
今こそ試すとき
伊藤 敏明
1
1日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院心臓血管外科
pp.618
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu76_618
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2009年冬,新病院移転直後のあわただしい時期であった.20歳の女子大学生の脳出血性梗塞を伴う活動性僧帽弁感染性心内膜炎例が紹介された.微小塞栓症状が継続しており,準緊急手術に踏み切った.疣贅を注意深く削ぎ落とすと,結局A3から後交連,P3にいたる広範な欠損となった.弁置換か? いや,今こそあの方法を使うときだ.アイデアにあった1枚の心膜による弁尖腱索の一括再建を試み,おそるおそる水試験をすると,なんとピッタリ止まってくれた(図1).後にseamless reconstructionとして報告したシリーズ1)の嚆矢となる1例であった.術後14年,元気に過ごされている.
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