連載 世界の常識,CALSを日本へ!
第❷回 CALSのベースとなったエビデンスの解説
野上 英次郎
1
,
蒲原 啓司
2
E. Nogami
1
,
K. Kamohara
2
1福岡徳洲会病院心臓血管外科
2佐賀大学胸部・心臓血管外科
pp.530-533
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu75_530
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2015年までの米国心臓協会(AHA)のガイドラインには,開心術後に心停止をきたした患者に関して,特化した記載はあるものの,一般的な蘇生プロトコールから大きく逸脱したものではなかった1,2).しかし2020年版AHAのガイドラインでは一部改訂され,開心術後に関しては,「心停止」を発見しても即座に「胸骨圧迫」を行うのではなく,まず「リズム評価」を行うことが記載された.つまり開心術後の患者の心停止のうち,心室細動(VF)/心室頻拍(VT)に対しては胸骨圧迫前にすみやかに電気的除細動を,徐脈,心停止に対してはすみやかなペーシングを,「トレーニングされた」スタッフ主導で行うことをレベルⅠで推奨している.ただし,1分以内に同処置が施行できない場合は胸骨圧迫を開始するというものである3).その根拠として,開心術後の患者は集中治療室(ICU)のような高度モニター管理下におかれているためであると,CALSは同プロトコールのベースとなる文献をもとに主張している.この「トレーニングされた」とは,Cardiac Surgical Unit-Advanced Life Support(CSU-ALS)[CALSの普及活動を行っている団体]が運営する蘇生トレーニングコースを習得することをさすと思われる.このような流れから,AHAでは2020年のガイドライン改訂で「開心術後の心停止」と「通常の心停止」との明らかな差別化を認めたと推察される.
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