まい・てくにっく
胸腔鏡下前縦隔腫瘍切除手術における横隔神経温存のコツと注意点
永島 琢也
1
,
伊藤 宏之
1
,
松田 安史
2
1神奈川県立がんセンター呼吸器外科
2藤田医科大学呼吸器外科
pp.1092-1093
発行日 2022年12月1日
Published Date 2022/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu75_1092
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前縦隔腫瘍横隔神経浸潤が疑われる症例では,術前X線像で横隔膜挙上がすでにみられている場合は温存を断念し,腫瘍とともに横隔神経を合併切除している.しかしそのような所見がなければ,片側の横隔神経麻痺では肺活量が約3割減少するといわれているため,積極的に横隔神経温存を試みるべきと考える.繊細な操作となるため胸腔鏡による拡大視が非常に有用であり,筆者らが通常行っている対面式胸腔鏡補助下手術(VATS)では,左側臥位右胸腔アプローチでは右第3肋間前腋窩線,右側臥位左胸腔アプローチでは左第4肋間後腋窩線と高い位置からカメラが入るため,腫瘍と横隔神経を正面視して良好な視野のもとに剝離操作できることが多い.胸骨正中切開では視野や腫瘍の位置などの関係から,横隔神経を確認しにくいことがたびたびある.側方からカメラを入れて対応することも多いが,それでも視野が不十分であったり,操作性に難があったりすることが多い.側臥位でのアプローチは視野・操作性とも優れているため,先に対面式VATSで横隔神経をぎりぎりで鋭的に剝離して神経線維を十分に温存し,その後に胸骨正中切開で腫瘍を摘出し,神経機能も温存できた症例を経験している.
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