まい・てくにっく
拡大胸腺切除時の下縦隔脂肪組織切除のコツ
井上 匡美
1
,
松村 輔二
2
1京都府立医科大学呼吸器外科
2獨協医科大学埼玉医療センター呼吸器外科
pp.908-909
発行日 2019年10月1日
Published Date 2019/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu72_908
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胸腺は第3咽頭囊から内胚葉上皮細胞として発生し,副甲状腺原基とともに腹側へ移動しながら成長する1).ここで述べる下縦隔脂肪組織はその先端部であり,左右縦隔胸膜と心膜に囲まれた脂肪組織には,程度はさまざまであるが胸腺組織が存在する.Jaretzkiらは,通常の胸腺被膜外にも胸腺組織が存在することを明らかにし,重症筋無力症に対するmaximal thymectomyという術式を提唱した.Jaretzkiらの報告では,肉眼的に認識される胸腺外に,頸部脂肪や無名静脈背側,左右横隔神経近傍や被膜外下縦隔脂肪組織内にも一定の比率で胸腺組織が存在することが図示されている2).また,Ashourはmaximal thymectomyを施行した38例の重症筋無力症患者の摘出組織を検索し,甲状腺周囲を中心に,気管前面やAP window,無名静脈背側,心横隔膜角などにもまれに異所性胸腺組織が存在することを明らかにしている3).したがって重症筋無力症に対する拡大胸腺切除術では,胸腺頭側領域ほどではないものの,下縦隔脂肪組織の切除も可及的にしっかりと行うほうがよい.
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