特集 がん医療における「家族ケアの課題」 ~困難事例への解決アプローチ~
よくある家族ケアの困りごとと具体的アプローチ
終末期のがん患者と家族の交流の場をつくる支援とその後のケア
今井 美佳
1
Mika IMAI
1
1佐久総合病院佐久医療センター患者サポートセンター/家族支援専門看護師
pp.181-186
発行日 2024年3月1日
Published Date 2024/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango29_181
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はじめに
終末期のがん患者とともにある家族は,患者が闘病している段階から,遠くない将来に訪れる死別に向けた予期悲嘆の過程にある.終末期のがん患者と家族の交流については,ビリーブメント(bereavement=死別)ケアといった視点からの重要性も指摘されている.がん患者と死別する家族の体験を国内の既存研究から統合した伏見らは,死別を経験する家族にとって,家族の体験の一つひとつが後々まで納得や満足につながる可能性がある一方で,後悔や罪悪感となりうる可能性もあることを指摘している.それゆえ,終末期がん患者においては,闘病の早い段階から,家族へのケアを開始することが重要とされている1).
しかし,昨今は治療の選択肢も増え,がん治療の外来化・在宅化が進んだ.看護師が,がん患者の家族情報を十分に把握できない,もしくは家族の状況をアセスメントする機会を得られないまま治療内容や病期が移行し,いよいよ終末期といわれる段階になってから,体調不良で入院した患者と家族へのケアに現場が悩むという例にも出合う.看護師たちは,このような状況下で,家族内の関係が複雑であったり,サポートシステムに脆弱性がうかがえる場合に,誰にどこまでかかわるべきか,というむずかしさを感じる.
本稿では,終末期を迎えたがん患者とその家族への交流の場をつくる支援について,家族看護の視点を取り入れ,がん臨床における「家族の課題」を具体的にとらえたアプローチから解説を行う.
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