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1.はじめに
当施設は,2000年9月に開設した,児童館を同じ建物内に併設している「高齢者福祉総合施設」である.児童館を併設しており,毎日,子どもたちが施設内を元気に動きまわっているため,「高齢者福祉総合施設」という名称ではなく,「福祉総合施設」といった名称が適切ではないかと日ごろ感じている.
高齢者施設としての事業内容は,特別養護老人ホーム(定員80人/以下,特養),短期入所(定員20人),通所介護(定員37人),訪問介護,配食サービス,居宅介護支援事業所などである.また京都市からの委託事業である桃山地域包括支援センターの窓口が1階の玄関横にあり,地域の民生員さんなどが職員に気軽に声をかけられる環境にある.
児童館は,午前中は乳幼児の受け入れ,午後は学童の子どもたちなど,幅広い年代の子どもたちが利用しており,しかも,高齢者施設と児童館の出入り口は1か所になっているため,ひとつの建物のなかで,さまざまな世代の出会いができる仕組みになっている(当初は,児童館と高齢者施設との出入り口は別々であったが,より多くの出会いが自然にできるようにと願い,出入り口は1か所にした.ただし,インフルエンザなどの感染症が流行る時期は,分けるようにしている).
建物は3階建てになっており,1階は児童館,地域交流スペース,通所介護,訪問介護事業所,居宅介護事業所などがある.2・3階は居住エリアとなっており,特養と短期入所生活者の日常生活エリアとなっている.
前述したように,ももやまは2000年9月に開設しており,国が提唱する個室ユニット型の特養のしつらえになっていない.主に4人部屋であるが,1つひとつの居室は障子とふすまで仕切られており,4人部屋といっても,個室的な環境になっている.特養で生活している利用者は,4人部屋でも,区切られた空間というイメージで「私の部屋」という認識をもっている.ある利用者の居室には,自宅から来た際に持参した仏壇や冷蔵庫,ミシンなどあり,「自宅からの住み替え」=「転居」といった印象である.居室としては狭いが,「自分の手の届く範囲に必要なものがある」という環境である.
特養は,開設当初よりユニットケア=個別ケアを導入しており,ひとつのユニットは10〜14人の利用者で生活,各ユニットは「○○町○丁目」とよんでおり,「ひとつの町」をイメージできるようにしている.各ユニットに固定の常勤職員を配置するなどにより,職員と利用者の関係は,擬似家族を呈している.
当施設には,週2回,精神科の医師に診察に来てもらっている.その医師が,診察の際にユニット間をまわっていたときに,「ももやまのユニットケアは,昭和の長屋式ユニットケアですね」と表現していたが,まさしくそのとおりである.
新型特養=全室個室ユニット型の特養では,各ユニットに玄関があり,ユニットが独立した形になっているが,ももやまでは,ユニットごとの玄関がなく,隣のユニットとの境界が明確に線引きされていない.そういえば,昭和30年代の日本では,長屋的な雰囲気の住宅が多かった.そこでは,隣家に「お醤油を借りたり,おかずのおすそわけ」などの場面が,普段の風景としてあったのではないだろうか.ももやまも,居室の前に長いすやソファが置いてあり,そこに2〜3人の利用者が座って,なにやらおしゃべりしたり,寛いでいたりする.疲れたら,自分の居室に帰り,ベッドに臥床してひと休みする.各ユニット間がオープンなため,自分のユニットで,気持ち的に少ししんどくなったら,隣のユニットに出かけてみたりと,自由に,気の向くままにユニット間を行ったり来たりする.玄関がないのもよいのかなとも,最近では考えたりする.
以上,ももやまの事業概要・建物平面図,およびももやま特養の特徴などを述べてきたが,以下に,ももやまの施設のなかでの,地域交流や世代間交流などによる生きがい支援の実際について紹介したい.
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