昨日の患者
元患者さん家族との交流
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.968
発行日 2015年8月20日
Published Date 2015/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210841
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- 文献概要
永年外科医を務めていると,患者さん,そしてその家族との付き合いが生まれる.公私のけじめも必要であるが,仕事を介して触れ合った縁を大切にすることにより,人生がより豊かになる.
我が家の居間に,平山郁夫画伯が描いたシルクロードシリーズのカレンダーを30数年来掲げている.カレンダーは毎年,元患者さんであったMさんの家族が送ってくれる.Mさんは私が大学病院勤務時代に受け持った患者さんで,当時40歳代半ばで自営業を営んでいた.肝硬変症による食道静脈瘤に対して,脾臓摘出を伴う食道離断術を施行した.術後の経過は良好で,私が大学病院を離れてからも転勤先の病院に通院してくれた.しかし,肝硬変が進行し,6年後に死亡した.そして奥さんと高校生,中学生,「おチビさん」と呼んで可愛がった小学生の3人の子供が取り残された.働き盛りで,しかもいまだ幼い子供らを残して逝かざるをえなかったMさんの気持ちを思うと,胸が張り裂ける思いがした.
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