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どんな薬?
大腸がんの治療の主流は手術療法ですが,ステージⅢなどの進行期がんでは30%に術後再発がみられるため,集学的治療として薬物療法の役割は大きいです.
大腸がんの薬物療法は,1957年頃に開発されたフルオロウラシル(5-fluorouracil:5-FU)がKey drugとなり,多剤併用がん薬物療法が行われてきました.しかし,1990年代になるとイリノテカン塩酸塩水和物やほかのフッ化ピリミジン系抗がん薬,オキサリプラチンといった新規抗がん薬が登場し,大腸がんへの薬物療法はそれまで以上に大きな成果をもたらすようになりました.さらに,2000年以降になると分子標的治療薬の開発が活発になり,上皮成長因子受容体阻害薬(epidermal growth factor receptor inhibitor)や血管新生阻害薬(angiogenesis inhibitor)が登場し,大腸がんの治療戦略は大きく変化しました.また,術前薬物療法や術後補助薬物療法による再発率の低下,生存期間の延長といった利益をもたらしました.
レゴラフェニブは,2013年に「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」に対して承認されました.いわゆる標準的治療といわれるものではなく,切除不能進行再発大腸がんの3次治療以降で使用される薬1)という位置づけです.長期間の全生存期間延長を望むことはできませんが,ほかの治療薬不応例や治療に対する意欲が高い人,ほかに効果的な治療薬がない消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)患者には期待ができる薬です.
レゴラフェニブは血管新生や腫瘍微小環境,腫瘍形成にかかわるキナーゼ(酵素)を阻害する,マルチキナーゼ阻害薬です.複数の因子を標的にしているため副作用症状もさまざまで,手足症候群,疲労,下痢,高血圧,皮疹などが出現します.進行期がん患者にとってこれらの症状はQOLや生命予後に影響を与えるため,早めの減量・休薬をすることが大切です.標準的治療として使用する薬剤との使用目的の違いなどを理解して,患者支援を行っていくことが重要となります.
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