特集 がん薬物療法の看護技術
第Ⅲ章 有害事象
食欲不振×患者の苦痛に寄り添うケア
麻生 咲子
1
1静岡県立静岡がんセンター看護部(5西病棟)/がん看護専門看護師
pp.475-478
発行日 2023年6月15日
Published Date 2023/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_475
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はじめに
「食べること」は,ヒトの基本的欲求であり社会的活動である.食欲不振は,「体重減少の有無にかかわらず食事を摂取したい欲望が喪失している状態」1)と定義され,がん治療に関連するもの,がんそのものに起因するものがあり,さまざまな要因が絡み合って生じる.がん薬物療法においては,命に直結することが少なく軽視されがちな有害事象の1つといえる.しかし,「食べられないこと」は患者のQOLに大きな影響を及ぼし,食欲不振に伴う体重減少や経口摂取量の減少から治療強度を落とす必要性も生じうる.
もう1つ,がん患者の食欲不振と深く関連する病態に「がん悪液質」がある.がん悪液質は骨格筋量の持続的な減少を特徴とし,体重減少を伴う.「食べたくない・食べられない」食欲不振に対し,「食べても痩せる」のががん悪液質であるが,がん悪液質の状態にある患者の多くが食欲不振を体験しており,これら2つは大きく関連しているといえる.
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