特集 “便秘”最新の治療とアセスメント ~ケア向上のためのエッセンス~
事例
排便マネジメントが疼痛緩和とがん治療への成功のカギとなった事例
栗山 尚子
1
Naoko KURIYAMA
1
1国立がん研究センター東病院看護部/がん看護専門看護師
pp.39-41
発行日 2023年1月1日
Published Date 2023/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_39
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
事例提示
患者情報
A氏,80代,男性.次男と2人暮らし.
入院までの経過
右下肢のしびれを自覚,徐々に歩行困難となり近医を受診.前立腺がん(cT2bN1M1),右大腿骨・左臼蓋・肺転移と診断され,当院を受診.右大腿骨頸部はすでに病的骨折をきたしており,痛みのコントロールと前立腺がんに対する治療を行い,骨接合術を施行する予定となり緊急入院となった.
入院後の経過
A氏が訴える痛みは,骨転移および同部位の骨折に起因した体性痛であったことから,NSAIDsに加え弱オピオイドを開始し,浸透圧性下剤と刺激性下剤を使用し排便コントロールを図った.その後A氏の痛みは改善し,右下肢の免荷で車いすへの移動が可能となり日中の活動も増加した.
排便コントロールに関しては,食事と水分の摂取量は安定していたものの,緩下剤の使用後も効果は乏しかった.さらに,内服量の多さにA氏の負担感も増し,床上での排便処置に伴う苦痛から,排便コントロールに対して消極的な様子が見られた.以上をふまえ,酸化マグネシウムの内服は中止し,分泌型緩下剤であるリナクロチドを開始した.入院中の使用薬剤と排便状況の変化を図1に示す.
© Nankodo Co., Ltd., 2023