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促進因子・阻害因子・バリアの特徴
高齢者がん患者のアドヒアランスは,高齢者がん患者が自律的に意思決定し,医療者と協働していくプロセスを包含しており,がん治療を継続していくうえで重要な概念である.アドヒアランスを高める看護のアウトカムは,患者のQOLを向上することである.しかし,臨床では,認知機能・身体機能の低下,支援者の不在などにより,治療効果をもたらす前に治療継続が困難になるケースにしばしば遭遇する.
本稿では,高齢がん患者のアドヒアランスの影響要因について述べ,高齢者機能評価を実施し多職種で支援した事例をとおしてアドヒアランスのポイントを考えたい.
高齢者のアドヒアランスの影響要因に関するシステマティックレビュー1)では,高齢者自身に関する要因,疾患に関する要因,処方に関する要因,保健医療サポート体制に関する要因,社会背景に関する要因の5つの因子が影響を与えていることが明らかになっている.さらに,5つの因子の具体的な内容として,認知機能の低下,多剤併用,コミュニケーション不足,患者教育の不足,介護者の不足などが示されている(表1).
高齢者のアドヒアランスのバリアの特徴に,認知機能低下がある.認知機能障害があると最初に下がるのはIADL(instrumental activities of daily living:手段的日常生活動作)といわれている.IADLが障害される項目があるということは,その事柄ができないというだけではなく,日常生活を営むうえでの支援の必要性を示すことにもつながる2).さらに,スクリーニングテストに用いられるミニメンタルステート検査(mini mental state examination:MMSE)などの客観的な評価もある.このようなテストを受けることは,想像以上に患者にとって負担である3).患者から協力が得られるような人間関係を形成する必要性や,不安を取り除くよう心がけるなど注意点を理解し実施する.
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