特集 がん患者のセルフケアを支えるアドヒアランス
精神症状を有する患者のアドヒアランスを高める支援
小山 良子
1
Ryoko KOYAMA
1
1杏林大学医学部付属病院看護部/精神看護専門看護師
pp.689-691
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_689
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促進因子・阻害因子・バリアの特徴
がん患者はがんと診断される前から始まる経過のなかで,初期治療である手術や化学療法,放射線療法に対する不安,進行・再発や積極的がん治療の中止へのおそれなどを,何回にもわたって経験する.さらにさまざまな要因が加わり,不安や抑うつなどの精神症状をきたすことがある.
がん患者の精神症状に対する薬物療法については,経口摂取不可能な症例もあるため薬物投与経路の評価が必要である.また,高齢化に加え,病態や化学療法,放射線療法などのがん治療に伴い,さまざまな身体症状を有していることが多く,薬の副作用に注意が必要である.
がん患者に対する精神療法については,支持的精神療法を基本とし,心理的防衛機制としての否認や退行を原則的に尊重し,治療者の逆転移に十分な注意を払いながらアプローチすることの重要性が指摘されている1).
患者のアドヒアランスを高めるためには,がん告知や再発の告知,緩和医療への移行時などバッドニュースを伝えるときの精神的なケアや,不安に対するサポートなどが重要であり,患者やその家族の精神的苦痛やQOLの改善を目標として,身体症状,精神症状,社会経済的問題,心理的問題,実存的問題を包括的にアセスメントする能力が医療者に求められている.
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