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促進要因・阻害要因・バリアの特徴
PARP (poly ADP-ribose polymerase:ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ)阻害薬は,損傷したDNA (deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)を修復するPARPを標的とした分子標的治療薬である.現在,日本においてオラパリブとニラパリブが保険適用されており,適応疾患は,再発卵巣がん,BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性再発乳がん,BRCA遺伝子変異陽性切除不能膵がん,BRCA遺伝子変異陽性去勢抵抗性前立腺がんである1,2).PARP阻害薬は,相同組換え修復欠損やBRCA遺伝子変異がある患者に有効性が示されているため,遺伝子検査を行い治療の適応を判断する.PARP阻害薬の適応判断は,臨床的診断意義として大きな意味をもつと同時に,BRCA遺伝子変異保持者であることが明らかになった患者,家族に対して,発がんリスクについて正しく評価することが重要である3).そのため,遺伝子検査を受ける前には,検査のメリット・デメリットを患者に十分説明し,状況に応じて遺伝カウンセリングを行うことも必要である.
PARP阻害薬の副作用は,悪心,嘔吐,倦怠感,グレード3以上の貧血が出現し,副作用による減量,休薬,治療中止が報告されており,副作用は服薬アドヒアランスの阻害因子の1つである.また,PARP阻害薬による治療は,病状悪化もしくは副作用などによって治療継続が困難になるまで続くため,患者は「いつまで続くかわからない」という精神的負担を感じることとなる.とくに維持療法としてPARP阻害薬を内服する患者にとって,化学療法によって治療効果が確認されたうえでPARP阻害薬が開始されるため,PARP阻害薬による治療の効果を実感しづらく,服薬忘れ,自己中断になる可能性がある.さらに,PARP阻害薬は非常に高価であり,1ヵ月の薬剤費は約62万円,3割負担でも約19万円となるため,経済的な理由で治療継続が困難になる可能性も考えられる.
これらのことから,PARP阻害薬を服用する患者は,副作用による身体的苦痛・治療継続による精神的負担,経済的負担などさまざまな問題を抱えながら治療を継続することとなる.そのため看護師は,患者のさまざまな側面からアセスメントし,患者の状況に合わせた支援を行う必要がある.
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