特別寄稿
患者向け「処方別がん薬物療法説明書」の活用 ~患者・家族への情報支援の充実に向けて~
北村 有子
1
Yuko KITAMURA
1
1静岡県立静岡がんセンター研究所 看護技術開発研究部
pp.275-278
発行日 2022年3月1日
Published Date 2022/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_275
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はじめに
がん薬物療法は,新薬の登場や術前・術後の適応拡大などによって,大きく様変わりしている.通院で行うがん薬物療法が一般化し,患者は副作用の多くを自宅で経験する.医療者が側にいないことから,副作用の早期発見や対処の初動は,患者・家族に委ねられる.ゆえに患者・家族は,治療スケジュール,副作用の出現時期や対処法などの十分な知識を得ておく必要がある.
がん薬物療法に関する知識を得るには,さまざまな患者・家族向け説明書がある.製薬企業のものは,種類豊富だが自社製品が中心で多剤併用療法に関するものが少ない.そのため,多剤併用療法の説明書の多くは,各医療機関で作成されている.医師,薬剤師,看護師が職種ごとに作成していることが一般的で,それぞれの説明書を手にする患者・家族からすると,内容が重複したり,表現が一貫性に欠けたりする部分がある.つまり,がん薬物療法の多剤併用療法について,患者・家族が理解しやすく,かつ十分な知識を得やすい一揃えの情報資材が乏しい.
そこでわれわれは,がん薬物療法のレジメン別で,多職種が共通利用可能な説明書を作成した.多職種が説明書1冊を用いて患者・家族に説明を行い,患者・家族がそれを活用することで,治療の全貌,副作用の出現時期や対処法などを容易に把握できることを目指している.
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