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どんな薬?
ゲムツズマブオゾガマイシンは,急性骨髄性白血病(AML)細胞の80~90%に発現しているCD33抗原を標的とした,抗体薬物複合体(antibody-drog conjugate:ADC)です.
米国では,2000年に殺細胞性の化学療法が適応とならない60歳以上の初回再発CD33抗原陽性のAMLに対して単独で用いる治療薬として,市販後に本剤の臨床的有益性を確認する試験を実施して追加データを提出することを条件に迅速承認されました.その後,SWOG (Southwest Oncology Group)が未治療のCD33抗原陽性AML患者を対象に,標準的寛解導入療法(ダウノルビシン+シタラビン)との併用,大量シタラビン地固め療法後のゲムツズマブオゾガマイシン追加投与の効果を検証する臨床試験を行いましたが,いずれも臨床的有用性が示されませんでした.しかも,ゲムツズマブオゾガマイシン併用群で致死的有害事象の発生率が高かったことから,2010年にファイザー社が販売中止と自主的な承認の取り下げを公表しました.
2005年にすでに薬剤の承認を得て販売されていた日本でもこのニュースは衝撃的なものでしたが,米国との効果・効能,対象などが異なり,「再発または難治性のCD33陽性のAML」に適応で,「ほかの抗腫瘍薬と併用しない」こととしていたため,販売中止にはいたりませんでした.その後,米国では2017年9月にダウノルビシン+シタラビンにゲムツズマブオゾガマイシン(少量分割)を併用した完解導入療法で新たな用法・用量にて臨床的有益性が認められ再承認されています.
再発AML症例では有効な薬剤がないため,価値のある薬剤である一方で,肺障害やアナフィラキシーショックを含むインフュージョンリアクション,感染症など致命的な副作用の出現も報告されているので慎重に投与管理を行う必要があります.
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