連載 もっと知りたい! 放射線療法【新連載】
粒子線治療の特徴と看護
戎谷 明日香
1
Asuka EBISUTANI
1
1兵庫県立粒子線センター附属神戸陽子線センター看護科/がん看護専門看護師
pp.614-619
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_614
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粒子線治療の概要
粒子線治療とは放射線治療の一つであり,身体の形態・機能を温存しながらがんの根治や緩和をもたらす治療法である.通常の放射線治療で用いられるのはX線やγ線などの光子線であるが,粒子線治療では陽子や炭素イオンなどの高エネルギー粒子を用いる.粒子線はX線と違い,体の中をある程度進んだあと,急激に高線量を周囲に与え,そこで消滅するブラッグピークという物理的特徴をもつ.がん治療においては,その性質を利用しがん病巣部に合わせて高い量の放射線を照射することでより高い治療効果を得ること,通り道となる正常組織に照射される範囲を狭くして有害事象を少なくすることができる(図1).そのためそれまで治療困難とされていた手術適応不能症例や放射線抵抗性腫瘍に対して良好な効果が認められている.
わが国における粒子線治療は,陽子線18,重粒子線6(予定1)の施設(図2)で,年間6,000人以上に実施されている.保険診療として,小児腫瘍,骨軟部腫瘍,頭頸部腫瘍(口腔・咽頭の扁平上皮がんは除く),前立腺がんの4つの疾患が実施され,160~230万円の医療費(自己負担はそのうちの一部)がかかる.それ以外の疾患については,日本放射線腫瘍学会が定めた統一治療方針に規定したものについて先進医療として実施(表1)されており,約300万円の費用がかかる1).保険適用の拡大や施設数の増加に伴い粒子線治療は,より身近なものとなってきている.
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