連載 対話に学ぶコミュニケーション ~第二の患者である家族とのかかわりかた~ 【3・最終回】
「もう死にたい」と訴える患者への対応に悩んで途方に暮れる妻
匿名
pp.539-542
発行日 2021年7月1日
Published Date 2021/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_539
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事例紹介
患者は80代半ばの男性で膀胱がんである.妻と二人暮らしで,息子(長男)は家庭をもち同じ町内に住んでいる.患者は60歳で会社を定年退職して園芸や近隣の住民とゲートボールなどを楽しんでいた.70代前半で膀胱がんと診断されて最初の治療(小線源療法)の7年後に血尿を認め膀胱がんが再発し,5回のTUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術),6回のBCG(ウシ型弱毒結核菌)注入療法を受けた.80歳を目前に左尿管がんで左腎尿管全摘出術を受け,80代前半で6回目のTUR-Btを受けたが,右水腎症になり右腎瘻造設術を受けた.その後の治療方針として主治医から右腎尿管膀胱全摘と血液透析の導入か放射線照射を説明・提案されるが,放射線科に受診したところ小線源治療後のため根治的放射線療法の適応がないと判断された.本人は,すでに左腎臓を失っており,手術による侵襲の大きさに加えて人工透析を受けなくてはならなくなることを負担に思い手術を希望しなかった.膀胱内に腫瘍の残存を認めるが,尿道の狭窄が生じておりこれ以上TURは行えないため,主治医と相談の結果,今後は積極的な治療はせず腎瘻のカテーテル交換のみを行っていくことになった.自宅療養では腎瘻に留置したカテーテルの管理のために訪問看護師の支援を受けていた.
看護師は,外来で患者が腎瘻カテーテル交換の処置を受けているうちに,在宅療養管理のための物品の準備をして,待合室で待つ妻に手渡し声をかけた.
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