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Case
Case1
82歳の女性.1週間前から食欲不振があり受診.水分は一定摂取できていたが,食事量は少なく,腹痛と便秘がある.家族によるともともとは健康で認知症もないが,普段の元気がないという.腹部は膨満があるが著明な圧痛はなく,瘢痕もない.どこが一番の圧痛点かを探っていくと見える範囲の腹部にはなく,さらに下着を下ろして診察してみると左鼠径部に圧痛のある鶏卵大の膨隆が存在した.
診断:左大腿ヘルニア嵌頓!
診察のポイント:着衣を十分に下ろし鼠径部まで明らかにして,腹部の視触診をすることである.高齢者では鼠径部ヘルニア嵌頓などのエピソードも,激烈な痛みを伴わずに起こることがある.その後も比較的ゆっくりと経過して,食欲がない,便の出が悪くなったなどの訴えで受診した例である.
Case2
75歳の男性.食欲不振と下痢を主訴に受診.1カ月くらい前から食事がおいしくなく,食事量が減ってきているというが,まったく食べられないわけではない.おなかは少し張っているが便は出ていて,血便ではないという.腹部は膨満があるが強い圧痛はなく,腫瘤も触れない.肛門指診では直腸内にわずかに下痢便が存在するが,直腸内腫瘤は触れない.さらに聞くと,下痢便がごく少量1日に何回も出ていたので,便秘ではないと考えていたという.
腹部X線写真では,上行結腸から横行結腸下行結腸にかけて大量の便が存在し,軽度のニボーが見られた.緊急大腸内視鏡とガストログラフィン注腸を行った.
診断:直腸S状部の2型直腸癌!
診察のポイント:下痢をしているという症状でイレウスは念頭からなくなり,単なる胃腸炎かと判断しやすいが,1カ月の経過は長すぎる.肛門指診は必須である.肛門指診では腫瘤は触れなかったが,下痢便は単なる水様便ではなく,ざらざらとした内容を含むものであった.便は造られているが,どこかに閉塞機転があると考えて,X線検査と内視鏡を施行して診断し,入院治療につなげた.
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