特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
原因不明の身体症状を訴える患者 死ぬことばかり考え,原因不明の身体症状を訴えていた脳腫瘍術後患者
川名 典子
1
1杏林大学大学院保健学研究科精神看護分野,元杏林大学医学部付属病院/精神看護専門看護師
pp.179-182
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_179
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❁ 事例紹介
Sさん,64歳,女性.
患者は3ヵ月前に左目の奥が痛くなり,眼科受診して眼精疲労と言われ点眼薬を処方されたが,症状が改善せず,1ヵ月後には眼球が突出してきたため,専門医療機関を紹介され,悪性脳腫瘍(眼がん)との診断がついた.治療として開頭術を行い腫瘍切除した.術後は,左眼瞼の開閉ができなくなったが,ほかの運動障害や思考障害など後遺症はまったくなく,経過順調で退院した.
ところが,退院後食欲不振とめまい,脱力感が強くなり,自宅で寝つくことが多くなった.外来で主治医の診察以外にも,夜間の救急外来を数回受診して検査したが,身体症状の原因となるような異常は発見されなかった.その結果,医師からは精神的問題ではないかと言われたが,患者自身はなぜそう言われるのか,よくわからないとのことだった.
そこで,外来受診の折に看護師が話をきくことになった.自己紹介の後,看護師が患者の困りごとをたずねることから会話が始まった.
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