特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
AYA世代① 医療に不信感があり,気持ちをなかなか表現できない若い白血病患者
野村 優子
1
1がん・感染症センター都立駒込病院看護部/精神看護専門看護師
pp.106-109
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_106
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❁ 事例紹介
Aさん,20代前半,男性.
1年半前に急性リンパ性白血病と診断され,前医で造血幹細胞移植を受けた.その半年後に再発し,ほぼ入院しての抗がん薬による治療が続いていた.今回,再移植を目的に入院し,1ヵ月が経過したところである.前医で治療方針決定に十分な説明がないままに受けた治療が最善だったのか,患者・家族がともに不信感をもち,当院での再移植を希望して入院となった.当院入院後,医療者に対して療養上の問いかけに返事をする程度で自分の思いはほとんど話さなかった.しだいに,昼夜問わず「落ち着かない.じっとしていられない」と訴えることが続くようになった.アカシジアを疑って原因薬剤として考えられる制吐目的で使用していたハロペリドールを中止し,クロナゼパムを追加しているが訴えは変わらなかった.精神的な影響もあるのではないかと心配し,気持ちをきこうとするも自分の気持ちをなかなか表現しないAさんにどうかかわればよいのかと困った病棟看護師から相談されて訪室した.Aさんの病室に入ると,Aさんはカーテンに囲まれたベッドに座っていた.
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