- 文献概要
近頃の若い人は……というと,如何にも古びてきこえるけれど,戦前と戦後というわけ方にして考えてみてもよいのであつて,約15年位の差が,その間にあるだけの年代の相違となるわけである。ただ,御承知のように,社会情勢は全て変つてしまつた。戦後の実態は,戦前以上のものである。この世相の変化につれてその時代に住む人の様相も,心理状態も,変つてしまつたであろうか? 若い世代の最も敏感に世相を反映する層の人々,これを代表するものとして,学生をあげてみられるが,その学生は,果してどのように変つたか,又,変らないか。戦前からずつと学生を扱つておられる大学の先生達と話合つてみると,次のようなことが言えるようである。
まず,戦後においては,学制改革もあつて大学の数が非常に殖えたこと,そして,それにつれて,学生の数も又おびただしく増加しているという事実をしらなくてはならない。そこで,戦前なら,大学生にならなかつたと思われる種類の人々が,大学生になつているために,学生と一口にいつても,その内容には,非常にヴァラエティがあるということである。学生が悪くなつたとか,質が低下したとかいう言葉をよくきくけれど,それに対しては—かりにイエスともノーとも答えられない。何故なら,真面目で,誠実な学生は今日でもあるし,遊んでばかりいて,だらしのないよくない学生は昔もあつた。
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