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どんな薬?
ダカルバジンは,日本で1986年から輸入販売が始まった抗がん薬です.国内外の臨床試験の結果,悪性黒色腫に対して有効性が示されたということで,しばらくは悪性黒色腫だけが保険適応になっていました.しかし,皆さんがダカルバジンと聞くと,最初に頭に浮かぶのがホジキンリンパ腫のABVD療法だと思います.しかし,ABVD療法でのダカルバジン使用が日本で承認されたのは2002年3月です.海外で,古典的ホジキンリンパ腫に対してABVD療法の有効性が公表されたのは1992年だったので,承認を得るまでに10年もかかったということになります.このように,海外では標準的治療として使用されている薬が,日本ですでに薬剤として存在しているにもかかわらず,標的としている疾患の適応承認が取れていないために使用できないということが多くありました.そこで,国は2009年に「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を立ち上げ,ドラッグラグの問題を解決する対応がとられるようになりました.
ダカルバジンは,高頻度の悪心・嘔吐や肝機能障害,汎血球減少などの特徴的な副作用があり,投与管理を行う上で看護師には症状マネジメントや予防対策など,緊張の高い薬でもあります.副作用症状の中でとくに注目したいのが,経静脈投与中に起こる血管痛です.ダカルバジンは溶解すると光と熱による影響を受けやすく,分解が促進されます.とくに,光によって分解されたときに生成される物質(5-diazoimidazole-4-carboxamide: Diazo-IC)が痛みを起こす原因であることがわかっています.残念ながら,現段階で発痛物資をゼロにして血管痛をなくす方法はありませんが,今までの研究で,いくつか対応策があるので紹介したいと思います.
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