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がん患者の5年相対生存率(がん以外の死因による死亡などの影響を取り除いた生存率)は2016年から6割を超え,がんサバイバーがますます増加している現在,がんも慢性疾患として位置づけられています.そしてがんをとりまく医療はめまぐるしい進歩を続け,様変わりをしてきています.2019年6月からゲノム検査が保険適用となるなどがんゲノム医療の波も押し寄せています.そのようななか,がん患者はたくさんの情報のなかで,治療法を選んでいかなくてはなりません.また,その後もさまざまな局面で意思決定を繰り返さなくてはなりません.今後ますます高齢化が進むなか,がんと共存しながら余生をどのように過ごすかという選択も必要です.最近の医療現場では,アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)という用語が周知され,看護師だけでなく医師やそのほかの職種もACPについて取り組み始めています.
がん患者も多様化してきており,成人期だけでなくいわゆるAYA世代での発病も少なくありません.また,高齢となっても治療を続けられる時代となってきており,あらゆる世代における意思決定のあり方にも眼を向けていく必要があります.
看護師が,がん患者の意思決定を援助する役割は大きいといえます.2019年7月の時点で393施設あるがん診療連携拠点病院では,がん相談支援センターが設置され,がん患者のさまざまな不安や疑問に対応しています.そのなかでも「がん治療」にまつわる内容はとても多く相談されています.2014年の「がん患者指導管理料」の算定によって,さらにがん患者への専門的な意思決定の看護介入も増えています.
そこで,本特集では,意思決定のありかたについて再考し,看護援助方法について理解しながら,がん患者の人生のターニングポイントとなる状況における看護援助のありかたについて,事例をふまえて考えていきたいと思います.さらには,多彩な意思決定のありかた,そして,人の成長・発達段階をふまえた看護援助の特徴についても学びを深めてまいりたいと思います.
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