特集 がん患者の創傷・皮膚障害 ~ケアの基本と実践~
【がん薬物療法関連創傷・皮膚障害】
抗がん薬の血管外漏出 ~早期発見にはサーモグラフィが有用~
松井 優子
Yuko Matsui
pp.733-735
発行日 2019年11月1日
Published Date 2019/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_733
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はじめに
抗がん薬の血管外漏出は,皮膚の潰瘍,水疱,硬結などの皮膚障害を引き起こす.ことに,壊死性抗がん薬は,少量の漏出でも潰瘍などの皮膚障害が発生するとされており,皮膚障害の予防には漏出の早期発見が重要であることは言うまでもない.
血管外漏出の判別には,漏出の初期症状である刺入部の灼熱感,疼痛,違和感などの自覚症状,腫脹,紅斑,浮腫,点滴の滴下速度の減少,末梢静脈ライン内の血液逆流の消失などの客観的症状の観察が推奨されている1,2).
しかし,これらの症状は血管外漏出に特異的ではない.滴下不良は留置針の固定状況によっても発生し,また疼痛や違和感などは薬液の浸透圧やpHの影響によっても発生する.さらに,投与時に漏出の症状はないが,再来時に皮膚症状がみられることがある.これらの問題を解決するためには,より客観的な血管外漏出の鑑別指標の開発が求められる.
筆者は,がん化学療法看護認定看護師として,抗がん薬による皮膚障害と向き合ってきた.その経験から,血管外漏出の現象を明らかにしたいと考え,理工学を駆使した研究に取り組んできた.本稿では,筆者のこれまでの研究から得た新たな知見を紹介する.
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